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いじめのない社会へ。NPO法人ストップいじめ!ナビ取材

いじめナビインタビュー

ご自身が小4からいじめに合い不登校経験がある須永さん。

小6からフリースクールに通い、そこで教育を受けてきました。

ご自身のいじめの経験からストップいじめナビ!で活動されています。

今回はいじめ問題について丁寧にお話してくださいました。

ー活動内容で講演がありますが、大学や会社内でのいじめについて何か活動はしていらっしゃいますか?

大人のいじめってことですか? 簡単に言うと大人を対象にはしていません。

でもここで大人のいじめは対応してるんですか?って結構問い合わせがくるんですけど、子どものいじめに対する活動をメインに行っています。

ーいじめ予防授業について、具体的にどのような内容のことを行っていますか?

みなさんは学校ってそもそもいじめの授業はありましたか? 大体、道徳の時間でやると思うんですけど…

—道徳の時間…結構省かれてました

そうなんですよ、道徳の時間ってもともと強化外活動という枠組みだったので(今後「道徳」は強化となり実施されるようになる)、いじめを道徳などで学ぶ機会が少ないわけです。しかし、いじめが起こっているのは学校なわけで、学校でいじめについて考えたり学ぶことは必要だと思っています。

そこが最初のいじめ予防授業を始めた動機の一つになります。

具体的には、「いじめとは何か」をなげかけながら生徒さんと一緒に考えていく内容です。

基本的には皆、授業をしなくてもなんとなく「いじめはだめだ」ってことはわかっているんですよね。

じゃあ、なぜいじめがいけないのか?とか、どうやっていじめを止めればよいのか?を、授業の中で具体的に考えてもらおうとしています。

例えば、具体的にいじめの事例を紹介しつつ考えてもらいます。(以下実際に授業で扱っている事例を簡単に紹介します)

「A、B、C、D、Eさんの仲良し5人組がいます。

AさんからBさんはDVDを借りました。しかしAさんにDVDが返って来たとき、DVDに傷がついていました。そこでAさんはBさんに直接言うのではなく、C、D、Eさんにそのことに対しての文句を言いました。やがて仲良しだった5人からBさんが仲間はずれになり、だんだん孤独になってしまいました。」

さて、はたしてこれはいじめでしょうか?

という例題を出して、これはいじめなのか? だとしたら誰が悪いのか? どういう方法だと解決できる? などの質問を投げかけ、講師とやりとりしつつ考えていきます。

いじめ予防授業を行っているのは、私たちのメンバーの「弁護士チーム」で、法律的にも、いじめはどうなのかということを含めて解説します。

特にこれは「いじめ防止対策推進法」という法律ができたからこそできる授業でもあるんですよね。

—法律に基づく以外にも倫理的観点からも教えるということもしているのですか?

一般的には倫理観を育ててくださいと、先生方からいわれる場合がありますが、あまり倫理的なことを教えるよりも、実際のトラブルから、なぜいじめはいけないことか? ということを体験的かつ具体的に考えてもらい、法律などの定義を織り交ぜながら伝えていく感じです。

例えばさっきのDVDの例で言えば、法律の定義で言うと完全にいじめなんです。

BさんがいくらDVDを傷つけてしまったからと言って、関係のないC、D、Eさんが仲間はずれにしてしまったことによってBさんは「心身の苦痛」を感じてしまっているのでこれはいじめになります。

法律のいじめの定義は「心身の苦痛を伴った、感じたらいじめ」なんですよ。

とても定義が広いんです。

いじめられている側が「辛い」と感じたら、それはもういじめになっちゃうんですよね。

「いじめ防止法」ができた理由は、これまでやってきたいじめ対策では、全然改善されておらず、いじめやいじめが理由の自殺が続いてきたことにあります。これはまずいという思いから法律ができたんですよね。

—マスコミ勉強会という活動がありますが、具体的にはどのようなことがおこなわれていますか?

マスコミによっていじめ自殺がよく報道されますよね。

でもいじめにあっている子どもがその報道を見てしまったら、

いじめから自殺という手段の逃げ方があるんだと意識させてしまう可能性があります。

これって苦しい人にとっては引き金になりかねないんです。

報道は皆が見られるものだからこそ

「こんなひどい事件があった」ということを報道するだけでなく、

いじめを受けたとき助かる方法を記事などに載せる必要があります。

例えば相談先を載せること、「チャイルドライン」という18歳までの無料でかけられる相談電話があるよということや、

当事者にとって(いじめられている子、いじめている子にかかわらず)安心できる情報を載せてくださいということも、マスコミの方々に呼びかけています。

また、間違った情報を報道しないためにもいじめについてしっかり理解し知識をつけましょうということで我々が研究している情報も提供しています。

以前、いじめがあったにもかかわらず、教育委員会がいじめはなかったと公言してしまった事がありました。そのときにマスコミが火をつけてしまい、教育長が見知らぬ人にハンマーで殴られてしまった事件がありました。

このようにあまり一点に注目して加熱報道してしまうと、さらなる悲劇が起こってしまう可能性もあります。インターネット社会においてマスコミの力はとても大きいので、ならば「救える情報」を提供すれば、いじめ問題も少しは良くなると思い、そのためにマスコミに向けて一緒に考える・伝えることを行っているわけです。

—HPにいじめに関する統計データがありますが、どのくらい信憑性があるものなのですか?

まず、いじめに関する統計データで、一番紹介されているのは、文部科学省が調べた「学校基本調査」ですね。全国の学校のいじめ件数を数えたものです。

(図・出典:文部科学省「学校基本調査」よりストップいじめ!ナビで作成)

(ストップいじめナビさんHP:http://stopijime.jp)

結論から言いますと、この数字は全く信じられないんです・・・。

なぜかと言いますと、

文部科学省が全国の学校にいじめ件数の調査依頼するのですが、

各学校の先生方が数え→校長先生が教育委員会に提出という仕組みになっている。このやり方には結構問題が多くて、

まず、実際にいじめがあったとしても先生が甘めに見てしまい、ただのふざけだと勝手に認識し、いじめにカウントされない場合があります。

次に、たとえ先生方が真面目にカウントしたら、いじめ件数が多い学校は教育委員会から指導を受けしまうため校長先生が少ない数を伝えてしまったりしていることもあるのです。

またこれはいじめの「認知」の件数のため、実際に先生が見ていない・見えていないいじめに関しては元々件数に含まれません。

なので日本でいじめのすべての「発生件数」を知っている人は一人もいないんです。

一方で、このようなデータもあります。

国立教育政策研究所、というところが中学校の生徒に継続的に調査したところによると、いじめは急増も急減もしていない、という調査結果が表れています。

大事なのは、「ある一定の割合ずーっと、いじめは起こり続けている」ということなんですね。

(図:出典:国立教育政策研究所調査より、ストップいじめ!ナビが作成)

さらに、こんな調査結果もあります。

内閣府の「自殺対策白書」っていうのがありまして、

18歳以下の過去40年の自殺件数を日割りでまとめたものです。

(リンク・ストップいじめ!ナビ「連休明けブルーにご用心」 http://stopijime.jp/message 出典:内閣府 平成27年版自殺対策白書 第2節 若年層の自殺をめぐる状況より)

見ていただくと分かる通り、年中自殺する子が絶えないのですが、9月1日前後、4月初め、5月の連休後、1月初旬など、長期休み明けに特に自殺者が多いことがわかります。

いじめられている状態にあるときに、休み期間に一旦はホッとできるかもしれませんが、学校が再開する日が近づくにつれ、またいじめが始まると思い、耐えられなくなってしまったり、休み期間中もいじめにあった人は学校に行ったらもっとひどいいじめに合うかもしれないと思ってしまい、気持ちが追い込まれ、自殺してしまうという現象が、数字にも現れていると思います。

なのでこの時期は特に注意して呼びかけています。それは当事者ではなくどちらかと言うと周りの大人に呼びかけたほうが効果的です。また「頑張ろう」と声をかけるのではなく「相談先があるよ」「少し休んでもいいんだよ」と安心できるような言葉を当事者にかけることや寄り添うことがことが大切です。

当事者が「助けて!」といいやすい環境を周りが作っていくことが大切で、

いじめ対策はそれぞれの立場の人がそれぞれやるべき事があります。

皆が同じように動けば解決するものでもありません。

いじめには「なくすための特効薬」がありません。だからこそ少しでも少なく、深刻化させないための「予防」が大切なのです。

学校においての予防は、教室の中にストレスがない空間を作ることが大切で、

その役目は主に先生にあります。

例えば連帯責任をとらせるような先生のクラスは統一されているように見えて

実はいじめが多いという統計があります。

でも先生は忙しく、ストレスを軽減させるべき先生が一番ストレスを抱えているんですよね。学校自体がストレスを抱える状態が問題になってしまっているのです。

いじめ予防にはストレスの無い学校づくりから始めないといけないと思っています。

—ふじんちゅ(藤枝)は大学で教職取っているけど、今の話を聞いてどう思う?

藤枝:そうですね。今の話聞いて大変だと思ったけど、先週の土曜日にちょうど母校の高校の卒業式を見に行って、そのときに先生が本気で育てていた生徒が卒業してしまうということで号泣していて、卒業してからもこうして生徒と会えるのは教師としてとてもうれしいことだと言っていました。

なので忙しいということ以上にやりがいを感じると思うので、私は教師になりたいと思っています。

(須永)

そうですね。

さっき僕が学校がストレスフルだと言っても、

学校にもよるし、先生にもよるので、一概に学校がストレスフルとは言えないけど、どの学校にも起こりうることだということを意識していかなきゃいけないんだよね。やっぱり先生自身がはやりがいをもってやっている部分もあるからね。

もう一ついじめに関するデータがあって、

昔はいじめをしている子もされている子も常にあるていど固定された感じだったんだけど、

最近の中学3年生に調査した結果では、これまでに無視や陰口、からかいなど、いじめやいじめの始まりの行為をしたことがあるか?という質問に対して9割の方が「したことがある」って答えたんだよね。一方で、「されたことがある」という回答も9割だった。つまり現代に於いて誰もがいじめにあった事があるし、いじめたこともあるってこと。ツイッターなんかで「いじめするやつみんな捕まえろ」みたいな意見が出たりするけれど、その理論でいくと9割の子が捕まってしまうことになるんだよね(笑)

親は自分の子どもがいじめられないようにと心配しているが、

いじめている可能性の心配もしたほうが良いとも思ったりする。その場合も、ただ叱るのではなく、どうしてそういう行動にとったのか、しっかり話を聞いてほしい。

—最近ですと福島の子たちが別の地域に避難してきてそこで風評被害による原発いじめが起こっていますが、この問題についてどう思っていますか?

原発の被害の問題はですね、

僕らは原発の専門家ではないのであくまでも一般的な見解でしかお答えできないんですけれど、

原発避難いじめに関しては実は朝日新聞から取材を受けていまして、そこでお答えしたんですけど、横浜に避難した子が風評によるいじめ被害にあったことがあったんですけど、「いじめの問題」と「原発避難の問題」は当事者にとっては密接な関係にあると思いますが、

このいじめのことに関しては、少し整理したほうが良いと思っています。

このことに関しては子どもだから起こったいじめではなく、

もともと大人が持っている差別的な意識が子どもにも反映してしまっていると思っています。

この手のいじめは原発事故の問題だからではなく、

もともと以前から「〇○菌いじめ」ってあったじゃないですか?

今回のきっかけがたまたま原発事故による放射能の問題があるけれど、「原発いじめ」そのものがとかく新しいものとは必ずしも言えないのだと思います。だからそこで原発いじめとして限定してしまうと、もともとのいじめの論議が狭くなってしまって、原発避難いじめに関しても他のいじめに関しても根本的な解決にはならないのです。

だから

原発事故による避難についても考えなければいけないし、

それとは別にいじめについても考える必要があり、整理することが必要です。

—法律ではいじめの定義があると思いますが、須永さんにとっていじめとはどういうものだと思いますか?

僕は法律の部分にある、「心身の苦痛を感じたらいじめ」という定義にはある堤度、納得しています。小さないじめもとらえて、対応していこうという前提にあるものなので。

もともと「なにがいじめ」かという議論になると難しいところがあって、

いじめを判断する基準は人それぞれなので、状況によっていじめられている子が救われない部分があるなと思っています。

だからこそ、法律の定義にあるように、いじめられている子が辛いと思った時点で、すぐに対処してほしい。

一概にいじめとはいえないものでも、辛いと感じる方がいたら誰かが手を差し伸べられる環境が大事になってきます。

—デリケートな話ですが、須永さんのいじめの経験を教えていただけますか?

そうですね。

僕は小学3年生のとき、後ろの子とふざけあっている程度のやりとりがありました。

でも小学4年生になるとクラスは変わらなかったんだけど、先生だけが変わって

でその先生が結構厳しくて今で言う体罰なんかもやっていた。

それで教室の空気がピリピリしてきた。最初の一週間は大丈夫だったんだけど、2週間目くらいからはだんだん友達のおふざけがエスカレートしてきて、筆箱の鉛筆おられたり、給食のスープが極端に少なかったりしてそれでその時の僕の反応を見て楽しんでクスクス笑うようになった。

最初の頃はやり返したりしたんだけど、だんだん辛くなってきちゃって、ある日涙が出てきちゃったときに、その泣いているのをみてまた皆が面白がっている光景を目にした。

それでクラスのそんな雰囲気に僕はだんだんいじめられる存在になってきているって感じて、泣いてもだめだしやり返してももっとやられるし、そのような不安と緊張で神経がはりつめてきちゃった。そして笑ってふざけているふりをしてたんだけど、笑っているともっといじめられてもしまった。完全にクラスから孤立しちゃって、そこから一ヶ月くらい頑張ったけど、限界になり、最初に体が学校に行くのを受けつけなくなってしまったんだよね。

それで不登校になっちゃった。先生に相談しても「様子見てやる」としか言ってもらえなかったし、親に言ったらややこしいことになるし、負けだと思ったからそれは自分のプライドが許さなかった。だからそのときはもう抜け殻になって感情がなかったということがありました。

現在は、いじめの傷はいくら話しても大丈夫にはなっていますが。

いじめられた後、2年半は、学校に行かずいえでひきこもりをしていました。最初は親が学校行ってほしいと言っていたが

途中からそこまでして学校行かなくても良いんじゃないかと気づいてくれて

それからようやく安心して家にいられるように。1年くらいしたら、

主に学校に行かない子どもたちなどが学ぶ「フリースクール」という存在を知って行ってみたいなーって思って行くことにした。

自分自身は、10代の後半になって、いじめや不登校体験を言語化できるようになって、

ようやく自分は「いじめ」にあっていたんだと言えるようになった。

—欧米のいじめについての上映会を行ったとHPで見たのですが、欧米と日本のいじめについて違いはなんですか?

池上さんではないですけど、良い質問ですね(笑)

では世界のいじめと日本のいじめの決定的な違いはなんだと思いますか?

—聞いた話だと、世界のいじめはジャイアンみたいな人が一人の子をいじめるみたいなイメージで、日本は集団で陰口を言うみたいなイメージがあります

そうですね。ジャイアンが暴力を振るうキャラという前提に立てば、ほぼ正解かな。

欧米は殴るなどの暴力系のいじめが多いという調査結果があります。

治安の悪い州は警察が小学校、中学校をドラックの対策、暴力事件の対策にも絡めて巡回していたりもします。

一方日本はそんな海外とは違う特徴があって、空気を読みあって、誰かをいじめるということが多い。

「からかい、無視、陰口」が多いです。

ただ欧米の方は社会的に抑圧がかかる部分もあるし、文化的な違いもあるので暴力系になるのかもしれません。例えば人種差別問題もありますし、州によって全然治安の良し悪しも違うので、そういった意味で格差があるためいじめも暴力などになりやすいとも言えるかもしれません。

「いじめ」問題は、日本だけの問題ではなくて、世界中でいじめ問題は深刻にとらえられていて、調査研究や予防策などが取られています。そんな海外の情報も参考にしつつ、日本のいじめ対策が進んでいくといいですね。

—以上でインタビューを終わります。本日はありがとうございました

ありがとうございました。

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取材を終えて…

いじめは私たち皆、加害者、被害者、傍観者とどの立場かはわかりませんが、

経験はあると思います。いじめはだめなことだと皆わかっているのにどうして起こってしまうのか?正直いじめをなくすことは困難かと思います。当事者以外の周りから声をあげ、被害者が助けと言える環境を作って行くことが大切だということを学びました。いじめは皆で予防していくべきだと思います。

押久保


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